寓話

小説や劇映画など媒体を問わず、世に広まっている物語の大半は寓話だ。もちろん、作られる物語の大半が寓話だというわけではない。物語の中でも特に寓話は世に広まりやすいというだけのことだ。
寓話とは、ある命題を字義通り語らず、代わりにその命題について比喩的に暗示することによって示す形式の物語である。ここでは暗示による関係が持つ任意性により、喩える物語と喩えられる命題との分裂が常に現れる。
この比喩による分裂は語る言葉と語られる物語との分裂に対する類比として読み解ける。つまり、言葉の指示する対象が聞き手の嗜好に応じてしばしば決定されるように、寓話が持つ含意は読者の嗜好に応じて決定される。