芸術作品か工業製品か。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-0b0f.html
ここでは漫画についてのみ話をしているけども、内容は文化一般に通用する議論だと思う。
例えば、芸術の世界には「工房制作」という言葉がある*1。一人の親方が多数の職人を従えて壁画や彫刻を作成するという手法だ。詳しく知らないが、ルネサンス期には既に一般になっていたらしい。工房制作では親方がすべての責任を引き受ける。貴族や教会から仕事を引き受ける主体であり、現代の観点からもその親方の作品とみなされている。
むしろ問題は「工房制作だから劣る」と考える人がいること。本来、作品としての価値は工房制作かどうかとは関係ない。もちろん全てにおいて技量の高い親方が全てを自身で制作したものには劣るかもしれないが、その基準を他の作品との比較に使うことはできないのではないか。
結局、作品そのものしか判断の基準にはならない。「レディ・メイド」や「見立て茶器」といった評者の芸術を持ち出さなくても、「芸術作品」として作ったものよりも優れた「工業製品」なんてざらだもの。
(追記)
水平分業と垂直分業は分けて話をした方が良かったかも。浮世絵は垂直、工房制作は水平。

*1:ちなみに狩野派に代表される日本画も似たようなものだ。