アンケートの技法3・提示について

アンケートの結果をどのように提示するかについてです。提示の仕方については色々ありますが、用途によって使い分けるべきだと思います。大まかには

学術
提示した情報を元に誰でも追試ができることが必要。
商売
提示した情報を元に相手を説得できることが必要。

の二通りがあるでしょうか*1

学術

質問紙法ならば調査対象の抽出方法と依頼文・質問紙を公開すれば追試が出来ます。追試をして同じ結果になれば妥当な調査だったという蓋然性が高まりますし、まったく違う結果になれば(調査や分析に間違いがなければ)未知の要因により結果が変わったという示唆が得られます。どちらも学術的な一歩と呼べるものでしょう。
調査手法によっては回答を得られる母集団に偏りが見られることがあります。例えば、はてな人力検索によるアンケートのように自発的に答えるものは「そのような調査に答えたがる人」の割合が高くなります。アンケートを答えることでポイントや粗品を貰える場合はその割合がさらに高まります。「炎上」や「祭り」が起こった場合は99%以上が「答えたがる人」になることでしょう。
それらと比べれば無作為抽出や系統抽出は比較的信用できます。それでも回答しやすい人のデータがより多く得られることは変わりありません。例えば、電話質問によるアンケートでは実施の曜日や時刻の影響が無視できません。日中に自宅へ電話をかけたとすればサラリーマンよりも専業主婦や定年退職後の高齢者の回答を多く得ることになるでしょう。
また同じ内容のアンケートでも質問紙の文面を変えると結果も変わるという調査があります*2。具体例として判りやすいのは「〜に賛成ですか?」と「〜に反対ですか?」の違いでしょうか。
これらの違いによる誤差は系統誤差であり、調査の際に見積もる必要があります。

商売

「市場調査」などはこちらに属します。「市場調査」とは「考えるためのヒント」を得るためのものであり、断片的な情報であっても役に立つこともあります。
ただし、統計学の観点からは話にならないようなデータが一般に使われており、そもそも統計学の範疇ではないと私は思っています。もし統計学の観点からめちゃくちゃなデータを使って「統計」を名乗っている「市場調査」があればそれは「ニセ科学」の一種です。

心がけるべきこと

統計データを提示する際に必須なものは

  • 母集団
  • 結果
  • 誤差

の三つです。

*1:今回は学術風味の項目がないので、文体は「です・ます」のみです。

*2:心理学や社会学などの定番です。