読書日記

折原一『模倣密室』ISBN:433492395X
当然のことながら今作はパロディなのだけど、そもそも本格ミステリというジャンル自体がパロディとしてしか成立しない訳で。
本格ミステリの枠内から今作のような戯画的にパロディを行った小説は極めて少ない。どちらかといえば、他ジャンル・他媒体からネタにされることの方が多く、*1誇張したガジェットを多用することによってそのジャンルに特有の構造を提示している。しかし、ちょうど新聞の風刺漫画のようにパロディであること自体に価値を見出すのでもなければ、パロディであるだけの作品は最後まで読む前に飽きてしまわないだろうか。
とりあえず、今作は本格ミステリのパロディであると同時に軽めの本格ミステリでもある。屈折に屈折を重ねた自己言及も折原一らしいといえばらしいなぁ、というのが私の感想だったりする。

*1:そのようなパロディの典型例が東野圭吾名探偵の掟』『名探偵の呪縛』だ。