『ROCKIN'ON JAPAN』と病跡学

病跡学とは、宮本忠雄氏によれば「精神的に傑出した歴史的人物の精神医学的伝記やその系統的研究をさす」、福島章氏によれば「簡単にいうと、精神医学や心理学の知識をつかって、天才の個性と創造性を研究しようというもの」です。

何らかの精神障害を病んだ天才の病理と創造性を論じるのが狭義の病跡学研究といえるでしょうが、現在、それに留まらず、病跡学の範囲は広がっています。対象となる「天才」も、従来、好んで取り上げられた小説家や画家のほかに、音楽家や写真家、さらには科学や政治あるいは哲学の分野の天才も俎上に載せられています。

http://pathog.umin.jp/pathography.htmlより。

前提として。

http://d.hatena.ne.jp/kilrey/20090530#p1http://d.hatena.ne.jp/kilrey/20090531#p1の内容と重なるのだけど、私は病跡学を万能理論の一種だと思っている*1

  • 素直な読解をする限り、作品に書かれていることを論拠にできる。
  • 無意識や抑圧を援用し、作品に書かれていないことを論拠にできる。

という点を考えると、任意の作品から任意の結論を導き出せるとしか思えない。

『ROCKIN'ON JAPAN』の場合。

とりあえずトラウマや苦悩というキーワードの使われ方から判るように、『ROCKIN'ON JAPAN』は俗流心理学に基づいた語りが主力だ。その点に関してはhttp://d.hatena.ne.jp/inumash/20090624/p1に付け加えることなんてない。
病跡学的なものとして『ROCKIN'ON JAPAN』を見ると、ただの出来損ないなのかもしれない。しかし、上述の通り病跡学自体が俗流の側面を持っており、俗流×俗流をあえて俗流と表現しても意味がないのではないか。
反転して『ROCKIN'ON JAPAN』的なものとして病跡学を見た方が興味深い。つまり、あれはポップ・アイコンへのファン・トークなのだと。

*1:一応補足しておくと、治療術としての精神分析まで否定するつもりではない。