非理想的読者

読者の大半は、作者の思っているような理想的読者/消費者ではない。以下では非理想的読者を類型化してみよう。

うっかり
彼らは熱心な読者である。作品の序盤(彼らが物語に没入する五分ばかり前のことだ)に説明された事柄を終盤まで覚えていることは少なく、山場に到ってもその山場が何故山場であるのかを理解していない。例えば、映画版指輪物語を見てアラゴルンとボロミアを取り違える人。
ファン
彼らは熱心な消費者である。新刊が発売されるとあれば書店に予約して発売日に購入するし、親しい友人にはその作者の本を(相手がうんざりするほど)薦めることも多い。基本的に新刊は後書きから読み始め、余裕があるときには小説の部分も読む。
カルト
彼らは極めて熱心な読者である。その作品を最低十回は通読しており、作中の出来事を殊細かく記した年表を持っている。また、優秀なカルトは作者も知らない事実関係にまで精通しているらしい。