演出の方法論

狂言回し→語り手

娯楽作品には狂言回しとなる登場人物が必要だ。 最初から最後までずっと一人の登場人物が狂言回しを勤めることもあるし、複数の人物が入れ替わり立ち替わり勤めることもある。ときには主要な登場人物すべてが狂言回しとなって物語に奉仕する作品さえあるほど…

視点または視座の問題

視点または視座の問題とは「語り手に対応する作中世界のものは何か」という点に集約される。 対応するものが登場人物ならば「人物視点」 対応するものが全知的存在ならば「神視点」 対応するものが物理的な事象のみを認知する存在ならば「カメラ視点」 など…

属人(小説・物語)

「それではもう少しハイカルチャー寄りの文化として、小説について考えてみる。」と書いたものの、日本にハイカルチャーが存在しているのかどうかは疑わしい。重ねて書くならば、一つの事柄をハイカルチャーとして受容するような規範文化が存在するのかどう…

属人

日本の文化は極めて属人性が高い。*1 例えば、大衆文化の中でも安価で手軽なものの代表としてTVの高視聴率番組を考えてみる。先日の紅白歌合戦、あれを音楽番組として見た人は少ないだろう。 そもそもが一般的なCDやDVDと比べれば不充分な条件で*2、かと言っ…

リアリズム(続き

Q.なぜ演出術としてのリアリズムが演出の放棄を言明するものにすぎないのか。 A.そもそも近代小説はリアリズムを前提としているからである。*1 *1:やる気低下中

リアリズム

リアリズムとは愚者の演出術である(言い過ぎ)。 リアリズムに基づいた演出がそれ自身何者かを生み出すことは稀だ。もちろん、既に存在する何者かを伝えるためには最良の手法になるのだから一概に否定することも出来ないのだが、少なくとも演出術としてリアリ…

非理想的読者

読者の大半は、作者の思っているような理想的読者/消費者ではない。以下では非理想的読者を類型化してみよう。 うっかり 彼らは熱心な読者である。作品の序盤(彼らが物語に没入する五分ばかり前のことだ)に説明された事柄を終盤まで覚えていることは少な…

ジャンル論

ジャンル論は常に不毛である。譬えるならそれは交雑種間の分類学だからである。 生物分類学の場合、古代から近代までに亘って博物学の知識に基づいた分類が行われてきた。そのため、発見者の印象だけで決めるなど、恣意的な判断が繰り返されてきた。それに対…

メタ(さらに続き)

さて、「メタフィクション」である。 「フィクション」とは散文形式で書かれた創作物語全般である。一般に「メタフィクション」と呼ぶときには創作物としての側面について着目し、なおかつ「フィクション」という語を再帰的に適用した「メタ創作」的創作物語…

メタ(続き)

「メタ○×」という言葉が通じるには「○×」に関する共通認識が必要である。 「○×」が具象物である場合にはそれなりに共通認識が得られる可能性が高い。私が今打っているキーボードが「私が今打っているキーボード」であることについて共通認識があるとは必ずし…

メタ

一口に「メタ」と言ってもその内実は様々である。そもそもが接頭辞という非独立語であることからも連想出来るように、その後に続く言葉が象徴するものによって初めてその意味が定まる。「その後に続く言葉が象徴するもの」が多義的であればあるほど、メタ○×…

可能性物(仮)と伏線

可能性物(仮)の利点とは情報量の適正化が計れることである。情報量の適正化された物語は少なくとも以下の三点で優位である。 伏線の存在を気付かせやすくなる。 伏線の活用を納得させやすくなる。 メタレベルでの記述が混入しにくくなる。*1 *1:メタレベルの…

可能性物(仮)の情報量

可能性物では選択肢を任意の数に調整することが出来る。つまり、より、のときにGainの最大値という値が得られる。Costの評価が読者によって異なることは明らかなので、ジャンルの違い、つまりは対象とする読者層の違い、に応じて選択肢の数を増減させるとよ…

情報量

民話では能力や可能性という観点自体が希薄である*1。全ての出来事は起こるべくして起こるのであり、そもそも選択肢自体が存在しない。 逆に近代小説では各登場人物が内面を持ち/持つことになっており、作者の都合を別とすればあらゆる選択肢を選ぶことが出…

成長の禁止/変身の許容

可能性物では登場人物が成長しない/してはならない。なぜならば定義により、精神面の変化は全く意味をなさず、能力面の変化はその前後が全く別の人物として扱われるからである。そのため、能力の変化は連続的な成長としてではなく、不連続的な変身として描…

特殊能力

格闘物の少年漫画や清涼院流水のJDCのようなものだけではなく、登場人物の限られた一部だけが可能な行為は全て特殊能力であるとみなしてよい。 例えば、一般的なミステリでは特殊能力を示すために職業を利用している。 警官 捜査を仕切ることができる。 医者…

なんとかOK編

OKとNGとの境界線について。 特別な能力 主要人物の能力は特別なものとして扱ってもよい。これは二重規範と極めて似ているが、持っている能力自体を明示することが出来る点が異なる。例えば、素早い身のこなしで弾丸をかわす主人公。*1例えば、初対面の人物…

NG編

まずは駄目だと思う演出について。 二重規範 いわゆる御都合主義*1演出の大半は二重規範に由来する。例えば、主要人物は掠り傷一つ負わないが、その他大勢の非主要人物は次々と倒れていく銃撃戦。例えば、主人公を初対面にも関わらず無条件に信用する登場人…