炎上中

東浩紀炎上中の件に関してブックマークしようと思ったが、混沌としすぎてどこに付けて良いやら迷ったのであえてここに書く。
まず断っておきたいのは私は「肯定派」・「否定派」のどちらにも与するつもりはないという点。これはポストモダニズムとかそういうものではなくて、単純に双方共に胡散臭いと思っているからだ。歴史に関しては事実の問題と解釈の問題が必ず入り混じる。そこをきっぱりと切り分けて考えなければならない。
事実の問題というのはつまり

  1. 戦争中だった。
  2. 都市を舞台に大きな戦闘があった。
  3. 双方共に軍属が沢山死んだ。
  4. その都市の周辺の非軍属も沢山死んだ。

という点だ。戦争なのだから人が沢山死ぬのは当然で、歴史学者の間の争点はもっと精度の高い話、つまり「約○×万人」という具体的な数字の見積もりになる。
この点については歴史学者の間でも数万〜数十万という幅で揺らぎがあるようだ。歴史学の専門的なことはよく判らないが、誰もが認める確かな証拠というほど強いものがなくて、弱い証拠を取捨選択して見積もっているとこれくらいの揺らぎは珍しくもない。いわゆる「有効数字ゼロ桁」、言い換えれば「桁は合っているけどそれ以上は判らない」という状況だ。
大まかな死者数が判ったとしても解釈の問題は依然として残る。つまり

  • この事件は「虐殺」か「戦闘」か。

という点だ。ここから先は学問の領分ではなく、政治の領分に入っていると思う。もちろん学者が政治に口を出しても構わないが、政治の領分では議論の質が全く違ったものになるという点を強調しておきたい。
まあ、相手を「敵」として認識している限りまともな議論はできないよね。お互いに尊重するというのが最低限、できれば敬愛や畏怖を感じるくらいの方が良い。そこが抜けているから「肯定派」も「否定派」も嫌いなんだ。