「素人でもわかりやすい」かどうか、素人には分からない。

http://d.hatena.ne.jp/minekoa/20090425/1240681507

確かに、「プログラムの構造」が「現実の構造」に似ていた方が「人がピン!と来やすい」というメリットはあるでしょう。しかし「ピン!」とくるのは「既に知っているルールに似てるモノを『直感的』と感じる」からで「その構造が(普遍的に)良い構造だから」ではありません。

の話。

「わかりやすい」とは「素人でもわかりやすい」の意。

「わかりやすい説明」を求める人はその分野に関して素人である。これは「素人」という言葉の定義に由来するものだ。「素人」である以上、その対象を厳密に理解することはできない。だから「わかりやすい説明」は掻い摘んだ概要説明となる。
もちろん、概要説明には概要説明の価値がある。http://d.hatena.ne.jp/kilrey/20090101#p3にも書いたけれど、概要だけを理解すれば済むならそれは良いことだ*1

「わかりやすい説明」は本当に難しい。

「わかりやすい説明」とは「正しく」「読みやすい」概要説明でなくてはならない。「正しい」には充分な知識が必要だし、「読みやすい」には充分な文章能力が必要だ。
大抵の専門家は「知識が充分で文章が下手」だし、大抵の非専門ライターは「知識が不十分で文章が上手」だ。寺田寅彦のような「知識が充分で文章も上手」ならば良いのだけど数が少なすぎる。
だから「わかりやすい説明」の多くは、専門家が書いた正しい概要説明を元に非専門ライターが読みやすくリライトすることによって作られる。これは正当な分業だ。

「素人でもわかりやすい」かどうか、素人には分からない。

これが最大の問題だ。しばしば言われるのとは逆だが、素人には自分が正しく読み取れたかどうか判断できないのだから、同語反復と言っても良いほどに正しい。
そのため、素人が言うところの「素人でもわかりやすい」は「読みやすい」に過ぎない。駄洒落を根拠にした「説明」が罷り通るのもこの一例なのではないか。

*1:ただしそれを仕事にするなら素人では困るのだけど。